​​デザインについての覚え書き

​​これは[designing plus nine Advent Calendar 2018](https://adventar.org/calendars/2958) 14日目の記事です。

 

ここ半年特に歴史に重点をおいてデザインについて学んできたので徒然なる雑記。

​​デザイン全般について個人的にどう捉えているかを広範囲について綴ろうとしたものであるので説明が不十分である点が多いかもしれない。そこの精緻化については今後の課題としたい。


デザインとアートの違いとは

  • デザインの対極にあるものとしてファインアートが定義されている。ファインアートは強い作家性があり、受け手によって自由に鑑賞されるために作られたものである。
  • ファインアートがロマン主義の時代に定義されて、その残滓である応用美術がデザインだと定義されていった。
  • 20世紀初頭までデザイナーとアーティストという職は分化していなかった。
  • ​​デザイナーの無名性、デザインの抽象的形状や機能主義、シンプルなものを良しとする美的感覚は19世紀後半から形成されてきたものである。
  • デザインは使用者やクライアントがおり、それらの人々のニーズやその背景にある社会情勢抜きに語ることはできないものであり、ファインアートとの明確な違いを持ったものであるが、形のみが注目される形での展示や、作家性を求めるデザイナーの発言などによって多くの人々にとって2つは混同された概念となっている。

デザインの歴史

  • ​​ヨーロッパでは産業革命への反動から生まれた「アーツ・アンド・クラフツ運動」があり、その文脈を受け継ぎ欧州全体に広がりを見せたアール・ヌーヴォーと呼ばれるトータルで近代生活を取り巻く環境をデザインしようとする運動が存在した。
  • そこから影響を受けたバウハウスやイタリア未来派、ロシア・アバンギャルドが派生していった。
  • アーツ・アンド・クラフツ運動やアール・ヌーヴォーには機械文明の受容が大きなテーマに据えられていたのに対し、時代が下るにつれ機会による大量生産との親和性が高められるようになってきた。その最前衛だとみなされている運動にイタリア未来派が存在する。
  • 一方、アメリカでは広い国土と低い人口密度を背景とした効率的な生産が志向され、大陸とは一線を画したデザイン史が展開している。
  • 1920年代、世界恐慌までに主にアメリカで大量消費社会が到来しそれに応じたデザインが誕生した。
  • ​​戦後再び復興をとげると大量消費社会を背景とした広告や製品のデザインが開花した。
  • 現代ではデザインの意味が拡張し、ドナルド・ノーマンの「誰のためのデザイン」で記述されているように上で述べたような「応用美術」だけではなく、調査や考え方と言った側面がより重視されている。
  • このような歴史記述が過去にどのように行われてきたのか、最先端のデザイン史とは何か?ということに対して社会学が一定の解を与えてくれる。
  • ​一方、本項目のはじめで述べたデザインには民芸のような全世界に広がる応用美術の存在については触れられていない。このような西洋の歴史ではない美術は西洋のデザインに対して影響を与えている側面もあるが、どのような位置づけとして捉えるべきかは現在学んでいるところである。
  • 歴史上に登場する個別の応用美術の手法について学ぶことも最新のデザインがどのような立場に置かれ、どのような方向に向かっていくのかを仕事として実践するためには重要なことだ。

デザインの要素

  • かつて戦間期のドイツの有名なデザイン学校バウハウスでは、人を取り巻く人工物でいちばん包括的なものである「建築」がヒエラルキーの最上位に置かれ、テキスタイルやその他のデザインが建築を構成する要素として従属するとされた。

 

f:id:suzunedp:20181214170239j:image
​​Walter Gropius' original Bauhaus curriculum
 

  • 現代におけるバウハウスが作ったヒエラルキーをアナロジーするならば、広い意味で体験を生み出すものとしての「サービス」がその最上位に置かれるべきである。
  • というのも人間にとって本質的なものは体験であるからだ。すべての物質的なものやヴァーチャルなモノは区別なく人間に何かしらの体験を与えるために存在しており、UberAirbnbといった例を見ればわかるように物質的なものとヴァーチャルなものの境界はなくなりつつある。
  • 「体験を与える」ことが本質であるならばその対象であるユーザーやクライアントについてよく知らなければ良い体験を与えることはできないと考えることは自然である。デザイナーがリサーチやインタビューを行わなければならない理由はここにある。
  • またその背景知識として心理学や社会学、データサイエンスを学んでいることが求められる。
  • ​​特に認知心理学は情報を整理して伝達するための、消費社会論はエンドユーザーがどのようなメッセージを求めているかについてヒントを与えてくれる。データサイエンスは数値に基づいた判断を行うために重要である。
  • このような調査や知識の上でデザイナーは応用美術を行う。美術を専攻していないデザイナーが応用美術の手法を学ぶことを軽視してはならないし、美術を専攻したデザイナーに関しては逆が言える。
  • ​応用美術の範囲には、デジタルメディウムやエンジニアリングを使いこなすことも含まれるようになってきている。
  • 新しい時代に合ったBauhaus Curriculumが求められている。

クライアントワークとしてのデザイン

  • 往々にしてデザインは第三者的立場の企業ないし個人に対して発注される形態を取る。
  • これは経営コンサルタントが専門的な知識を助言し、また経営責任を負うことを請け負ってるのと同様の役割を主にビジュアルの領域において受注していると考えられる。
  • この受託会社の立場に立って考える場合に、エンドユーザーにとって良いデザインを行うのはもちろんであるが、その影で重要なのはクライアントとの良好な関係形成と納得度を高めるということである。
  • このためにデザイナーはデザインプロジェクトを成功させるためのコミュニケーション手法を学ばなければならない。
  • コミュニケーションの手法として重要な要素として、整理された情報の提示と、前後や他者との差異の提示、(必ずしも正しいとは限らない)顧客の要望とデザイナーが実現したい意図との意見調整が挙げられる。

​​